二十四節気を知る
この講座では旧暦のひとつである「二十四節気 にじゅうしせっき」を
からだとこころを調えるための軸、ペースメーカーとして扱っています。
意外と耳慣れている二十四節気
二十四節気と聞いて、ぱっと思い浮かぶ季節はありますか?
お彼岸の中日で祝日になっている「春分」「秋分」
昼の時間がもっとも長く夜が短い「夏至」
反対に夜の時間がもっとも長く昼が短い「冬至」
2月の節分の翌日は「立春」、同様に「立夏」「立秋」「立冬」など
ふだんの生活の中で耳にしたことがあるものがあるのではないでしょうか。
これらはすべて二十四節気のひとつの季節を表しています。
旧暦というと、月の満ち欠けを元にする太陰暦も含めて
私たちがふだん使っているカレンダーや体感とはズレている印象がありますが、
実はそのギャップの中にいのちを育むひみつ、からだを楽に調えていく秘訣があります。
まずはこのこよみについてお話ししましょう。
いのち育む太陽のこよみ
二十四節気は旧暦のひとつで、
現行の暦と同じく太陽の運行を元に定められているこよみです。
月の満ち欠けによる陰暦を使っていた古代中国で農事暦として生まれました。
陰暦の1か月の日数は28,29日。
2,3日少ないことでだんだん前倒しになり、
ズレが大きくなると1か月余分に挟み込む(=閏月うるうづき)ことで調整されますが、
気候と月が毎年同じ組み合わせにならない不規則なこよみは
農作業の目安としては大変不都合でした。
その点、太陽の動きを基準にする二十四節気は
今のカレンダーと照らし合わせても日付のブレは1日程度とごくわずかです。
農作業の適切な時期を判断する上で重要なのは
昼夜の長さやそれに伴う寒暖の変化、
雨が続く、霜が降りるといった天候をあらかじめ予測することですが、
そうした気象に大きな影響を与え、植物や動物の成長を促す、
いのちを育むエネルギーを地球上のあらゆるものに与えているのが太陽です。
その太陽の動きを基準にすることで
昼夜の長短の変化が的確にとらえられる他、
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉にうなずく年が多いように、
寒暖の変化をとらえる上でもある程度確かな目安になっています。
「穀雨こくう」「芒種ぼうしゅ」には農作業との結びつきが直接表れていますし、
「八十八夜はちじゅうはちや」「半夏生はんげしょう」「二百十日にひゃくとおか」など
雑節ざっせつの一部の日取りも二十四節気が基準になっています。
日本へは平安時代に伝わり、以来明治初期の改暦まで暮らしに根付いており、
一部は今でも耳にする機会が多いものです。
1年を24分割、春夏秋冬はそれぞれ6つの節気に分かれ、
一つの節気は約半月、確かな季節の移ろいを捉えます。
(一つの節気をさらに3分割してより細やかに捉えたものが七十二候)
体感とのギャップを生むカラクリ
一番寒い頃なのに「立春」って?
四季の前に「立」がつく節気はその季節のはじまりを指します。
「立春」は春の気(エネルギー)が立ちはじめるという意味ですが、
必ずと言っていいほど「暦の上では春ですが、まだ寒いですね」と言われます。
確かに一年でもっとも寒い時期は1月後半の大寒から2月前半の立春にかけての頃です。
こんなに寒いのになぜ春なのか、
この体感とのギャップはどこから生まれるのか、と思ったことはありませんか。
現代の春夏秋冬
気象庁では春夏秋冬をそれぞれ、
春:3〜5月、夏:6〜8月、秋:9〜11月、冬:12月〜翌年2月としていますが、
これにはあまり違和感を感じないと思います。
確かに3月にもなると少し温かさを感じて外に出たくなってきます。
日本では卒業や入学の時期にも重なり、町中にもフレッシュな春の気配が満ちていきます。
変化は「天 → 地 → 人」の順に起こる
一方、二十四節気と体感とのギャップは約1か月前後。
これは天(=太陽)の動きを起点に
『天→地→人(天と地の間)』と順に変化が起こるため、
わたしたち人間が体感するようになるまで約1か月前後タイムラグが生じるのです。
春を例にとってみましょう。
二十四節気では春は2月前半の「立春」に始まり、
2月後半の「雨水」、3月前半の「啓蟄」と続きます。
「立春 りっしゅん」は春の気が立つ頃。
太陽が黄道上の春の位置につき、
1か月半前に迎えた「冬至」で底を打った昼の時間が少しずつ長くなります。
朝日が昇る時刻は小寒〜大寒の頃が一番遅く、徐々に早くなって、
立春の頃には朝の明るさを実感できるようになります。
「雨水 うすい」は雪が雨に、氷が水へと変わりはじめる頃。
輝きを増す太陽の光を大地が受けて表面の氷が溶け始め、
地上の大気は温められて空高く上昇し、
上空の寒気がゆるむ中で雪ではなく雨となって降りてきます。
「啓蟄 けいちつ」は地中の虫たちが目を覚ます頃。
冬の間固く凍てついていた大地に染みこんだ雨は土をやわらかくし、
地中で眠っていた虫たちを起こして外へと誘いだします。
実際に鉢植えの土からも虫たちが出てきて驚くことも多いです。
人間は「はだかの虫」と言われますが、
確かにこの頃になると陽気に誘われて外へと出たくなります。
(変質者が出没しやすいのもこの頃と言われます。。)
こうして季節のはじまりは天候や空、特に陽光の変化にいち早くあらわれ、
天 → 地 → 人とリレーの如く一つの変化が次の変化をもたらして季節は進みます。
からだの生理的変化と同調するこよみ
現代と二十四節気では季節の区切り方が異なります。
【現代】
変化が明らかに感じられるようになった頃をその季節ととらえる
【二十四節気】
その季節を代表する気候の「変化のはじまりから起こりきるまで」の過程を示す
例)夏を代表する気候は「暑さ」
日中は少し動くと汗ばむほどの日差しが届き始める5月上旬に始まり、
気温が上がりきる8月上旬までを「夏」ととらえる。
(8月いっぱい暑いことは暑いが、気温が青天井で上がっていくことはない)
このように汗をかくなどといった生理反応の変化は
寒暖を中心とした気候変化に順応するために体感よりも早く始まります。
体感を当てにしているとスタートにすっかり乗り遅れたり、
前の季節のケアを延々と続けてしまったりするのです。
寒暖など環境の変化を表している二十四節気を目安に
体感よりも先んじて対処していくことで
季節に応じた、あるいは次の季節に備えるためのセルフケアができるようになります。
祝日になっている「春分」「秋分」やゆず湯に入って無病息災を願う「冬至」など
何かと話題にのぼりやすい二十四節気をベースに、
この時期どんなことを意識するとからだが楽になるかを実践で身につけると
毎年季節がめぐるたびに思い出してはご自身をいたわるきっかけになります。
二十四節気をあなたのからだとこころを守るペースメーカーとして
親しんでいただければ嬉しいです。
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